がん性疼痛 看護学生嘆きの部屋

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    がん性疼痛






    がん性疼痛 Cancer pain

    がん性疼痛はどの病期にも発生するが、末期のがん患者の約70%は主症状として痛みを体験する。
    持続性の痛みが大半を占め、その痛みの50%はかなり強く、30%は耐え難い痛みである。
    80%の患者は複数の痛みを抱えている。

    がん性疼痛は、健康人が日常生活で体験する痛みとは基本的に異なる特徴を持つ。
    近代ホスピスの創始者であるCecily Saundersは、末期がんの患者さんとかかわった経験から、
    がんの痛みをTotal pain:全人的疼痛と捉え、
    4つの因子:「身体的疼痛 physica pain」「精神的疼痛 psychological pain」
    「社会的疼痛 social pain」「スピリチュアルペイン spiritual pain」
    があるとした。
    それぞれの因子が身体的疼痛を増大させる因子となる。

    WHOも、Saundersのトータルペインの考え方を受け継ぎ、1986年に「WHO方式がん性疼痛治療法」を公表した。

    がん性疼痛ではモルヒネを投与しても依存が生じない
    がん性疼痛は、がん患者にみられる体重減少、食思不振、呼吸困難などの症状と密接な関連を持つことが多い。
    逆に睡眠や休息、人とのふれあいなどは、痛みを減少させる。
    がんの治療および身体的疼痛を取り除くことが第1優先であるが、それが難しい患者でも、
    理解し、指示する態度を示すことで痛みを和らげることができる可能性がある。

    良好ながん性疼痛管理が、他の症状のコントロールにも良い影響を及ぼし、
    患者の満足度およびQOLの向上に寄与するため、重要と考えられている。

    痛みの閾値を減少させる因子
      鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬
      他の症状の緩和
      睡眠
      理解
      人とのふれあい
      創造的な活動
      緊張感の緩和
      不安の減退
      気分の高揚
    痛みの閾値を増大させる因子
      不快感
      不眠
      疲労
      不安
      恐怖
      怒り
      悲しみ
      抑うつ
      倦怠
      孤独感
      社会的地位の喪失
                      (Twycross R, 2003)



    がんの痛みの原因がんの進行に伴う痛み
    ┏内臓器官へのがん浸潤による痛み
    ┣白血病の痛み
    ┣がん組織による血管閉塞
    ┣骨転移の痛み
    ┣がん組織の末梢神経浸潤による痛み
    ┗脳内転移

    がんの治療に関連した痛み
    ┏術後痛
    ┣手術による神経損傷による痛み
    ┣化学療法によるニューロパチー
    ┗放射線治療の副作用

    全身衰弱に伴う痛み
    ┏便秘による腹部の痛み
    ┣褥創による痛み
    ┣直腸の痙攣
    ┗口内炎

    がんと無関係な痛み
    ┏片頭痛
    ┣帯状疱疹痛*
    ┣リウマチ
    ┗ヘルニアなど
     *がん患者では、帯状疱疹痛の発生率が高い。
     
    突出痛(breakthrough pain)




    がんの転移は、がん組織から離れたがん細胞が、体腔、リンパ管、あるいは血管の中を移動して他の臓器に漂着し、そこでまた浸潤性に増殖する過程をたどる。

    内臓器官へのがん浸潤による痛み
     一般に、消化管や泌尿器・生殖器に原発した初期がんは痛みを伴わないが、
     進行すると痛みが生じる。
     特に、がんが痛みに敏感な後腹膜腔に拡がると、痛みが出る。
     胃、腸、胆道、尿管、子宮、膀胱などの管腔臓器にがん組織が浸潤して、
     内容物の通過を妨げると、痛みが現れる。
     関連痛が生じる場合もある。
      消化器 胃がん/大腸がん/肝がん/膵がん
      泌尿器 腎がん/膀胱がん
      呼吸器 肺がん/
      その他 乳がん/白血病


    消化器のがんの痛み
     胃がんの痛み
      胃がんは胃の粘膜に発生して増殖し、転移する。
      がん細胞の増殖が粘膜下層にとどまっていれば早期がん、
      固有筋層より深部に増殖すると進行がんと呼ばれる。
      胃の集団検診で胃がんが発見された患者のほとんどすべてが症状を自覚しないが、
      外来受診者の60-80%が何らかの症状をもっている。
      がん組織に潰瘍ができると、痛みの他、胃部不快感、腹部膨満感、食欲不振、
      吐血、下血などの症状がみられる。
      胃がんが進行し、管腔が狭窄すると、通過障害による、痛みを生じる。
      幽門部に発生したがんは狭窄をきたしやすい。
      痛みの中で、最も多いのが、みぞおちを中心とした心窩部の痛み。

     大腸がんの痛み
      大腸がんは先ず、内腔に向かって増殖するので、痛みはなかなか出ない。
      集団検診で、大腸がんが発見された患者の
      3大自覚症状:1. 便秘がち、2. 便が細くなった、3. 痔。 腹痛は少ない。
      直腸がんが潰瘍化して二次感染を起こすと、早い時期から炎症の痛みが出る。
      増殖が進んで通過障害が起こると、イレウスになり、腹痛が出る。
      がんが大腸の外壁に拡がって骨盤腔内に浸潤すると、容易に痛みが出る。
      肝臓などへ転移して増殖すると、痛みが出る。

     肝がんの痛み
      肝臓に原発したがんや肝臓に転したがんによる痛みは、右季肋部、心窩部に現れるが、
      しばしば右肩にも関連痛を感じる。
      肝臓に腫瘍が発生して速やかに増殖すると、肝臓の被膜が伸展され、
      被膜に分布する痛覚受容器を刺激して、痛みの所在がはっきりしない、
      鈍い疼く痛みが生じる。肝臓全体の圧迫感と表現されることが多い。
      上腹部の鈍い自発痛あるいは、圧痛。他に、上腹部不快感、腹部膨満感などを訴える。
      肝がんが被膜に浸潤して肝表面に拡がると、腹腔内に出血して、痛みが増強する。
      腫瘍による門脈の塞栓症や排便、内視鏡検査による腹圧上昇により、
      肝がんが破裂すると、突然痛みが増悪する。

     膵がんの痛み
      十二指腸に向かう膵液の通路となる膵管の内圧上昇あるいは、
      膵内および膵周囲への炎症の波及で、痛みが生じる。
      膵臓に原発のがんでは、膵管が徐々に閉塞され膵管内圧の急激な上昇が起こらないので、
      強い腹痛は起こらない。
      膵臓がんが増殖し、後腹膜膜に拡がると、強い上腹部痛あるいは背部痛が現れる。
      これらの痛みは、坐位、または脊柱前屈で軽減する。患者は、前胸部を膝につけ、
      脊柱を弓なりに前屈して、痛みを和らげようとする。
      一般に膵がんの痛みは、夜間に増悪する。
      肺がんなどが膵臓に転移し、速やかに増殖すると、膵液の排泄が滞り、
      膵液に含まれるタンパク分解酵素が活性化されて、膵臓の実質を分解する。
      血漿タンパクからブラジキニンなどが産生され、血管透過性が亢進し、
      血液成分が血管外に出て、膵臓が腫れ、被膜が伸展して、
      心窩部から背部にかけて痛みを生じる。左側に痛みを感じることが多い。

    泌尿器のがんの痛み
     腎がんの痛み
      腎臓に発生した腫瘍が速やかに増殖すると、腎臓の被膜が伸展されて、
      腰背部、特に肋骨錐体三角部(肋骨と脊柱に囲まれた三角形の部分)に痛みが生じる。
      腎臓がんあるいは腎盂・尿管のがんから大量に出血すると、
      血液が凝固してできた凝血塊が尿管を閉塞する。
      閉塞が急に起こると、尿管結石症のような疝痛発作をきたす。

     膀胱がんの痛み
      膀胱にがんが浸潤すると、下腹部に限局した鈍痛を感じる。
      膀胱がから大量に出血して、膀胱内で血液が凝固すると、痛みが強まる。

    肺がんの痛み
      初期の肺癌の主症状には痛みはなく、咳と血痰
      肺の実質や肺の表面を覆う臓側胸膜に病変があっても痛みを感じない。
      遠隔部への転移を伴わない肺がんの症状は
      咳、痰、胸痛、血痰、呼吸困難、背部痛である。
      これらの症状は、原発巣の伸展、胸壁への直接浸潤、肺内転移、
      縦隔リンパ節転移、がん性リンパ管症などによって生じる。

      胸痛の原因になる肺癌は大部分、進行性肺癌。
      4つのタイプに分けられる。
         1肺癌の胸壁への浸潤
         2パンコース型肺癌
         3肺癌その他の胸壁転移
         4癌性肋膜炎

      病変のある部位と同じ高さの前胸面に、関連痛を感じる。
      腫瘍が、胸腔内の気管にあれば胸骨上部の裏側に痛みを感じる。
      腫瘍が、気管の分岐部にあれば左右の胸骨縁に痛みを感じる。
      胸腔内器官のうち、胸壁肋膜、骨性胸壁、軟部胸壁などにがんが浸潤すると、
      始めて浸潤部に持続的な疼く痛みを感じる。
      肋骨骨膜、胸椎骨膜、肋間神経、筋肉組織、皮下組織などに腫瘍が浸潤した場合、
      胸痛が生じる。
      胸郭の内側を裏打ちする壁側胸膜には、痛覚受容器が豊富に分布していて、
      がんが壁側胸膜に波及すると、胸痛が出る。
      浸潤が拡がるにつれて、咳による増悪や、間欠的な鋭い痛みが現れる。
      (肺がんでみられる胸痛の多く)
      肺がんががん性胸膜炎を引き起こした場合にも、胸痛が生じる。
      胸水の貯留があって、胸水が溜まった側に鈍い胸痛、あるいは重苦しさを感じる。
      胸水が溜まると、呼吸困難が重なるので、苦しみが強まる。
      肺がんが胸椎や肋骨に浸潤すると、これらの骨に持続的な鈍い痛みを感じる。
      骨に転移したがんによる神経の障害、脊髄圧迫なども痛みの原因になる。
      肺がんが横隔膜に及ぶと、同側の肩、頸にも関連痛を感じる。
      肺実質に発生したがんがリンパ管を経て、肺門リンパ節に転移すると、
      がんが肺門部の大血管の壁に浸潤する。大血管の周囲にリンパ管炎を起こし、痛みが生じる。

      肺がんが肋間神経を浸潤すると、肋間神経痛:肋間神経に分布する体壁に痛みを感じる。

     パンコースト腫瘍 Pancoast tumor=肺尖部胸壁浸潤癌 superior sulcus tumor
       肺尖部に原発した肺がん
       胸壁上部を直接浸潤し、腕神経叢の下部(第8頸髄と第1胸髄からの神経)、
       交感神経幹、上部肋骨、肋間神経などの浸潤圧迫による
       特異的な症状(パンコースト症候群)を呈する。
       神経幹痛とみられる肩や脊椎傍部、上肢の疼く痛み、筋萎縮、頸部交感神経麻痺による
       ホルネル症候群(侵された側の眼瞼下垂、縮瞳、顔面の無汗)などが現れる。

    乳がんの痛み
      がんが炎症を伴わずに乳腺内にとどまっている場合は、痛みは感じない。
      炎症が乳房内に拡がると、痛みが出る。
      がんが胸郭に波及したり、がん組織に潰瘍や感染が発生すると、痛みが出る。
      がんが腋窩リンパ節に転移して、上肢のリンパ流を妨げると、上肢にリンパ液が溜まって、
      浮腫を招き、肩から上肢にかけて強い痛みを生じる。
      定型的乳房切断術を実施して、腋窩リンパ節を郭清したために、
      同様なリンパ浮腫を生じることもある。

     乳房切除後疼痛症候群 Post Mastectomy Pain Syndromes: PMPS
      乳房切除術における神経損傷による痛み↓ =神経因性疼痛
      乳がんの腕神経叢へ浸潤↓により、早い時期から肩、上肢の痛みが現れる。
      乳がんは、血液やリンパ液にのって全身に転移するため、手術では、
      わきの下のリンパ節を切除することが多い。
      その際に、リンパ節の間を走る肋間上腕神経を切除したり、引っ張ったりして傷つき、
      痛みを引き起こす。手術中の神経への血行障害も関連すると言われる。
      がんを摘出した側の乳房やわきの下、上腕の内側に、常にヒリヒリとした感覚があり、
      時折カミソリで切られたような鋭い痛みが走る。
      触ったり、下着や衣服がすれると痛みが増すので、ブラジャーもつけられない。
      人とぶつかると痛いので、満員電車や人込みを避けるようになる。
      外科手術の直後はほとんどの患者が、傷跡の炎症が原因で痛みを感じるが、
      NSAIDsが効き、徐々に和らぐ。
      PMPSには、NSAIDsは効かず、痛みが3か月以上続き、慢性化する。
      厚生労働省研究班が2004年に痛みの有無や程度、場所についてアンケート調査をしたところ、
      再発のない患者976人(手術後平均8.8年)のうち、21%が、PMPSと思われる
      慢性的な痛みを抱えていた。
     Phantom breast pain ←→幻影痛
      乳癌手術後に出現する幻の乳房の痛み
      除去した乳房付近に起こる不快、痛み、しびれ、重い感触


    白血病の痛み
      白血病では、白血病細胞が骨髄内で無制限に増殖し、骨髄の正常な造血機能が阻害する。
      急性期:発熱、動悸、息切れ、頭痛などの症状がみられる。
           出血傾向が強まり、全身の至る所に出血する。
           頭痛には発熱によるもの、白血病細胞の脳への浸潤によるもの、
           頭蓋内出血によるものなどがある。発病の初期あるいは経過中に
           しばしばびまん性の骨・関節痛がみられる。
           関節の痛みは関節内への出血によるものだが、骨の痛みは
           骨の実質の中になるハバース管や骨膜化に白血病細胞が浸潤して起こる。
      白血病の治療によって、血中の尿酸濃度が上がって痛風になり、
      そのための痛みが出ることがある。
      全身の抵抗力が低下して、感染を来たし、それによる痛みを生じることが多い。

    がん組織による血管閉塞
      血管壁にがん組織が浸潤すると、血管周囲リンパ肝炎と血管攣縮が起こり、
      びまん性の灼けつく痛み、あるいは、疼く痛みが現れる。
      この痛みの分布は、末梢神経の支配領域と一致しない。
      近くに腫瘍があって、血管の部分閉塞あるいは完全閉塞をきたすと、うっ血、虚血が現れる。
      うっ血は、浮腫を招き、侵害受容器が分布する筋膜などを伸展して、
      次第に増強する強い痛みを生じる。
      頭蓋腔を出る静脈が閉塞すると、次第に増強する頭痛がみられる。
      骨盤腔に腫瘍が発生して、腫瘍自体と肥大したリンパ節が静脈を圧迫して、
      血流の灌流が妨げられると、うっ血による浮腫と痛みが下肢に現れる。
      子宮がんの手術で骨盤のリンパ節を郭清すると、手術後、リンパ腺の灌流不全による
      リンパ浮腫を下肢に生じる。
      乳がんが腋窩リンパ節に転移して、上肢のリンパ流を妨げると、
      上肢にリンパ液が溜まって、浮腫を招き、肩から上肢にかけて強い痛みを生じる。
      定型的乳房切断術を実施して、腋窩リンパ節を郭清したために、
      同様なリンパ浮腫を生じることもある。
      大きな静脈を閉塞すると、この動脈が血液を供給する場所が虚血に陥り、
      発痛物質が産生されて痛みが現れる。

    骨転移の痛み  
      がんの骨転移は、がん組織から遊離したがん細胞が、血行性に骨に漂着し、
      そこで増殖する。直接がん組織が骨に浸潤することもある。
      がんの骨転移は、X線写真の所見から、溶骨性、硬化性(造骨性)、両者の混合型の
      3型に分けられる。
      多くの場合、骨転移があると、骨の吸収と形成が同時に進行していて、
      形成が優位なときには硬化性、逆に吸収が優位なときには溶骨性となり、
      両者の中間であれば混合型となる。

    ┏骨吸収
    ┣脊椎骨転移
    ┣椎間板ヘルニア
    ┗脊髄圧迫

     溶骨性
       肺がん
       乳がん
     硬化性
       前立腺がん  

      骨転移しやすいがんは,乳がん,前立腺がん,肺がんがある。
      乳がんは,比較的若くして発症する方が多く,骨転移の頻度がとても高い。
      しかも,骨転移の状況によっては,麻痺や半身不随となってしまうこともあるので,
      十分注意が必要。

      骨の痛みは、血清カルシウム値とアルカリホスファターゼ値の上昇、X線単純撮影増の
      骨転移所見など骨転移に特有な臨床症状よりも出現頻度が高い。

     骨の痛みは、
      発育した腫瘍が、骨膜に分布する痛覚受容器を機械的に刺激したことによって生じる。
      炎症を伴う腫瘍浸潤によって、骨膜、骨髄および近くの関節と軟組織に発痛物質が遊離され、
      それらに分布する侵害受容器が刺激されて生じる。

      できるだけ骨転移の進行や骨の変性を抑え,予防できる治療法を積極的に
      検討していくことが求められる。
      骨転移により,浸潤や圧迫が進むと,骨自体の痛みに加えて,運動や加重などの
      体動時に鋭い痛みが起こることがある。
      骨転移痛の体動時の痛みはオピオイドが効きにくい。
      体動時の痛みをとるために麻薬性鎮痛薬を増量と,安静時には量が多すぎて,
      強い眠気が起こる可能性がある。
      鎮痛補助薬を併用しながら,状態に応じてきめ細かく薬剤を調節するひつようがある。
      骨の変性や圧迫が進むと,病的骨折が起こる危険性も高くなる。
      がんの高カルシウム血症で使われているビスホスホネートは,骨転移痛の除痛効果がある。
      同時に,骨転移の進行や転移に伴う病的骨折などの予防効果も期待されている。

    骨吸収
      転移したがん細胞の骨吸収には、がん細胞の直接作用とがん細胞が
      プロスタグランジンE2を産生して、破骨細胞を活性化する機序が加わる。
      NSAIDsは、プロスタグランジンによって生じる破骨細胞による骨吸収と
      発痛増強作用を抑制する。
      ステロイド性抗炎症薬もプロスタグランジンの産生を抑制するが、長期投与すると、
      カルシウムの骨への沈着を阻害し、骨がもろくなる。
      そのため、大腿骨や上腕骨に壊死を生じ、新たな痛みが現れる。
      この痛みは、身体を動かすと増悪し、安静にしていると緩解する。
      ステロイドの慢性投与を中断すると、筋肉痛、関節痛が現れ、筋肉や関節の圧痛を伴う。

    脊椎骨転移
      骨転移が最も起こりやすいのは、脊椎骨である。
      骨転移が脊椎骨骨膜に及ぶとその場所に痛みを感じる。
      脊椎骨である。脊椎骨へは、静脈叢からはいる場合と傍脊髄リンパ節その他に
      転移したがんが脊椎骨とそれを取り囲む軟組織に二次的に浸潤する可能性がある。
      脊柱の全長に沿ってある複雑な静脈叢は、四肢の静脈にあるような弁を持たないこともあり、
      骨転移を容易にしている。
      咳や排便の際の力みによって、胸腔、腹腔の内圧が高まると、
      血液が静脈叢に押し出され逆流する。
      乳がん、肺がん、骨盤腔のがんが発生すると、がん細胞がこの静脈叢に入りやすい。

    骨転移に続発する椎間板ヘルニア 
      ヘルニアが後縦靱帯あるいは前縦靱帯を刺激して痛みを生じる。
      ヘルニアのある場所に定常な疼く痛みを感じるが、間歇性の痛みが出ることもある。
      脊柱を動かすと痛みが増強し、圧痛あるいは打痛がある。

      脊髄後根が脊椎骨に転移した腫瘍や骨転移した椎間板ヘルニアによって
      圧迫された神経根痛:圧迫された後根に侵害受容線維を送る脊椎や筋肉、
      皮膚に痛みを感じる。
      椎間板ヘルニアの痛みは、横になると軽くなり、起立すると増強する。
      椎間孔に腫瘍が及んで、そこにある神経根を圧迫するときは、その逆。
      両者とも、脳脊髄圧を高める咳、くしゃみなどによって増強する。

    脊髄圧迫
      脊椎骨に転移した乳がん、前立腺がん、肺がんなどが硬膜上空あるいは椎管腔に向かって
      増殖したり、転移した脊椎骨が崩壊し、腫瘍と骨が一緒になって硬膜上腔に進入したりすると、
      脊髄前根、脊髄後根と脊髄自体が圧迫される。
      硬膜上腔に発生した腫瘍が脊髄を圧迫すると、正中線に近い背中に痛みが現れ、
      しばしば関連痛や根性痛を伴う。
      背中の痛みは進行性の鈍い疼く痛みで、横臥、運動、力みで強まる。
      腫瘍が脊髄を圧迫すると、脊髄の白質に浮腫が現れ、ステロイド性抗炎症薬が
      この浮腫を軽減する。

    ニューロパシックペイン=がん組織の末梢神経浸潤による痛み
      米国疼痛学会ガイドラインでは、「神経因性疼痛はがん患者の30〜40%に発現し、
      侵害受容性の痛みに重なる形で発現することが多い」と記載されている。
      がん患者に置いては、がんによる末梢神経や脊髄神経の圧迫、がんの軟部組織への
      浸潤として、あるいは手術や化学療法・放射線療法などのがん治療の結果
      ニューロパシックペインが起こる。
      初期においては、骨膜の刺激による体性痛であっても、腫瘍が増大することによって
      神経を圧迫するようになると、ニューロパシックペインに変化することがある。

      がんによるニューロパシックペインには2種類ある。
       神経根痛
       神経線維には異常がないが、神経上膜、神経周膜および神経内膜などの結合組織に
       機械刺激が加わったり、炎症が及ぶと痛みが発生する。
       神経幹の結合組織に分布する痛覚線維が興奮して生じる痛み。
       歯痛に似た疼く痛み。しばしば局所に圧痛がある。
       安静にしていると痛みが軽くなる。
       動いたり、神経を伸ばしたり、触診したりすると、痛みが現れる。
       モルヒネが有効である。
       異常感覚性疼痛
       がん患者の痛みの30%くらいに神経因性疼痛が関与
       障害された侵害受容線維が再生するときにできる側芽が原因となって生じる痛みと異常感覚。
       障害された末梢神経が再生するとき、切断された神経線維の断端から
       多数の側芽が伸びる。
       側芽は、比発的に興奮し、機械刺激が加わると敏感に反応する。
       また、交感神経節後線維の伝達物質であるノルアドレナリンにも反応する。
       そのため、神経線維が切断されて刺激を感じなくなった感覚脱失部位に、
       異常感覚を伴った痛みが現れる。
       痛みは、灼けつく痛み、あるいは、電気が走るような痛み。
       異常感覚は、ジンジンビリビリ感、むずむずする感じなど。
       モルヒネは有効ではない。

       頭蓋底神経浸潤(三叉神経痛、舌咽神経痛など)
         頭部頚部がん、頭蓋骨転移
       肋間神経浸潤
         肺がん・乳がんの胸壁浸潤
       腕神経叢浸潤
         パンコースト型肺がん、乳がん、リンパ腫
       腰仙骨神経叢浸潤
         骨盤内臓がん局所浸潤
       脊髄神経浸潤
         ホジキン病

    腕神経叢浸潤への浸潤
      腕神経叢への転移は、パンコースト型肺がん、乳がん、リンパ腫にしばしばみられ、
      早い時期から肩、上肢の痛みが現れる。
      約25%の患者に、異常感覚性疼痛:有痛性異常感覚を伴った灼熱感が第4,5指に現れる。

    腰・仙骨・陰部神経叢への浸潤
      腰神経叢への浸潤:下腹部、鼠径部、大腿全面の皮膚と筋肉の痛み。
                   骨盤内臓器に発生したがん。
                   腰神経:第1-4腰髄神経の前枝。
      仙骨神経叢への浸潤:下肢に放散する痛み。
                    仙骨神経:第5腰髄〜第3仙髄を出た脊髄神経の前枝が
                           骨盤内で作る神経叢。坐骨神経はその枝で、
                           大腿屈筋群と下腿および足のすべての筋肉と皮膚に
                           分布する。
      陰部神経への浸潤:下肢に放散する痛み。
                   陰部神経叢:第2-4仙髄神経の前枝が骨盤内で作る神経叢で、
                           その主要な枝である陰部神経は、会陰・外陰部の筋肉
                           および皮膚に分布する。陰部神経叢にがんが浸潤すると、
                           肛門周辺部を刺激しても感じないが、鈍い疼く痛みが
                           自発的に現れる。

    脊髄神経浸潤
      ホジキン病(=悪性リンバ肉腫病)は悪性リンパ腫の一種。
      頸部リンパ節の腫れで始まり、周期的な発熱、脾腫などがみられる。
      やがて全身の多数のリンパ節が腫瘍化し、造血臓器が系統的に侵される。
      腫瘍が脊椎の椎管腔、あるいは後腹膜腔の部分で脊髄神経を侵すと、強い背部痛が現れる。

    脳内転移
      脳実質そのものは痛みを感じない。
      がんが脳に転移したときに最もみられる症状は、頭痛である。
      脳転移による頭痛は、痛覚受容器が分布する大血管髄膜の一部などへの
      がん浸潤、あるいは、それらの牽引によるものである。
      脳転移による頭痛は、広い範囲に感じるびまん性の疼く痛みである。
      朝起きた直後が最悪で、起床後は軽くなる。
      この頭痛は、NSAIDsで改善する。ステロイド性消炎鎮痛薬は、
      痛みと脳転移に伴う浮腫を弱める。
      これによって、脳脊髄液の圧(脳圧)が下がり、痛みを感じる組織に加わる牽引が和らげられる。
      眠っていると、血中の二酸化炭素が増えて、脳血管が拡張し、
      脳血流の増加と脳圧の亢進が起こる。眠ると横になるので、脳質から脊髄の方向に
      入出する脳脊髄液の量が減って、脳圧が亢進する。
      起床後、脳圧が下がり、組織の牽引が弱まって痛みが軽くなる。

    手術による神経損傷による痛み
         ー医原性の医原性のニューロパシックペイン
     根治的頸部郭清術後の痛み---下部脳神経損傷
       感覚消失域の締め付けられるような灼熱感。
       異常錯感覚と電撃痛がみられることがある。
     根治的頸部郭清術後の痛み---頸神経叢損傷
       垂れ肩症候群により筋骨格系の痛みが生じることがある。
     開胸術後の痛み---肋間神経
       自律神経系の変化を伴うまたは伴わない感覚消失を伴う切開部に沿ったうずくような痛み。
       切開創瘢痕の最内側および最頂部尖に、筋肉間に固有のトリガーポイントのある
       強烈な圧痛をしばしば感じる。
     乳房切除術後の痛み---肋間上腕神経
       上腕後部、腋窩部および前胸壁に生じるこわばった、締めつけられるような、
       焼けつくような痛み。
      上腕の動きによって増悪した痛み、おそらく筋骨格系機能不全または浮腫による。
     腎摘除後の痛み---表層の皮神経損傷
       側腹部、前腹部、鼠径部のしびれ、膨満感、倦怠。
       異常錯感覚がよくみられる。
     四肢切断術後の痛み---末梢神経およびその中枢の投影部損傷
       少数の患者に永続的で重度の幻肢痛がみられる。
      断端痛は一般に、創傷治癒により消失するが、創部の敏感度に関連する痛みは、
      数ヵ月ないし数年後に現れることがある。

    薬物療法によるニューロパシー
      化学療法薬(ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタクセルなど)
      軸索流を阻害する副作用をもつ。
      そのため、脊髄後根神経節にある細胞体で作られた物質の
      供給を絶たれた感覚神経線維が障害される。
      末梢から入力を絶たれた脊髄後角のニューロンが自発的に興奮して生じる。 

     ニチニチソウアルカロイド(ビンカアルカロイド)
       キョウチクトウ科ニチニチソウ Catharanthus roseus に含まれるアルカロイドのうち、
       抗腫瘍作用を有するインドールアルカロイド。
       薬理学ではしばしばビンカアルカロイドと称された。
       ニチニチソウの古い学名Vinca roseaに因んでつけられたもので、
       天然物化学や生薬学では用いられず、今日ではニチニチソウアルカロイドと称されている。
       微小管か、その構成タンパクのチュブリンに作用し、細胞の有糸分裂を中期で停止させ、
       細胞分裂を妨げる作用がある。
         ビンクリスチン vincristine 白血病、悪性リンパ腫、小児腫瘍などに用いられている。
         ビンブラスチン vinblastine 非小細胞癌に用いられている。
      軸索流を阻害するために、副作用としてニューロパシーとなることがある。
      ピンカアルカロイドを投与された患者のほとんどすべてに不快な痛みと異常感覚が現れる。
      普通、灼けつく感じとジンジンビリビリ感が、四肢の末端部に始まって、
      次第に体幹に近い部分に拡がる。

     タキソイド:タキソイド系の化合物
      パクリタキセル paclitaxel(TAXOL® タキソール®)
      ドセタクセル docetaxel(タキソテール®)

      イチイ Yews (Taxus spp., Taxaceae) の木の樹皮からとれるアルカロイド。
      イチイの木に多くの薬理活性のある物質が含まれていることは古くから知られていた。
      紀元前に書かれたJulius Caesar (102–44 B.C.) の「ガリア戦記」にはイチイの木からの
      抽出物を毒薬として使ったという記述がある。

      パクリタキセル paclitaxel(TAXOL® タキソール®)
       イチイ科の植物(Taxus baccata)の針葉又は小枝から抽出される
       10-デアセチルバッカチンIIIを原料として半合成された。
       タキサン系に類する抗悪性腫瘍剤:パクリタキセルは、シスプラチンと呼ばれる治療薬の
       併用薬として、卵巣がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がんなどの治療に対して
       承認されている。
       エイズによるカポジ肉腫 Kaposi's sarcomaの治療に対して、FDAはよって承認した。
       有糸分裂阻害剤 mitotic inhibitor:微小管タンパク重合を促進することにより、
       微小管の安定化・過剰形成を引き起こし、微小管の脱重合を起こりにくくし、
       その結果、細胞分裂を阻害して抗腫瘍活性を発揮する。

       副作用:白血球減少、好中球減少、末梢神経障害、悪心嘔吐等がある。

    放射線療法によるニューロパシー
      放射線治療の合併症として、末梢神経の損傷による痛みが生じる。
      末梢神経を取り巻く結合組織の微小循環の障害、結合組織の繊維性増殖と慢性炎症、
      末梢神経線維が髄鞘を失う脱髄などがその原因である。

    突出痛 breakthrough pain 
      オピオイドなどによる規則的な除痛を突然破って現れる、一過性の強い痛み
      突出痛には、体を動かすときに生じる体動痛も含まれる。
      持続する慢性的な痛みは、フェンタニルパッチ(デュロテップパッチ)のような
      長時間作用型オピオイドをベースライン鎮痛薬として使用し、突出痛に対しては、
      便宜使用するレスキューが必要となる。
      突出痛に必要であったrescue doseの回数が、翌日から定時処方のモルヒネの増量の目安になる。


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    [ 2008/04/21 11:25 ] 病理学 | TB(0) | CM(0)
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